赤字の営業チームが、なぜ「目標8倍」を達成できたのか?
「うちの売上は、Aさんの頑張りとBさんのセンスで、なんとか持っている…」 多くの経営者が、そんな見えない不安を抱えています。
今回ご紹介する企業も、まさにそうでした。SEOとWeb広告で集客はできているものの受注率が低く、事業は赤字状態。特別なスキルを持つメンバーがいるわけではなく、ごく普通の4人チームが、それぞれの「頑張り」でなんとか業務を回している、という状況でした。
クライアントからの最初の依頼は、切実なものでした。「まずは赤字を脱却し、トントンまで持っていってほしい」
しかし、結果は私たちの期待すら遥かに超えるものとなります。当期で受注率を2.5倍に引き上げ、売上目標の8倍を達成し、大幅な黒字化を成し遂げたのです。
この変革は、魔法ではありません。ごく普通のチームが、極めて論理的なプロセスを経て「仕組み」の力を手に入れた結果です。この記事では、その変革の全記録を公開します。
この記事のポイント
- 赤字チームが売上目標8倍を達成した変革の全プロセスがわかる
- 属人的な営業から「仕組みで売る」組織に変わるための3つのフェーズとは
- データに基づき、ボトルネックを特定し解消する具体的な流れを学べる
フェーズ1:現状把握 ― まず、私たちは「敵」の正体を突き止めた
全ての変革は、現状を正しく知ることから始まります。私たちはまず、チームが漠然と感じていた「うまくいっていない」という感覚や思い込みを排除し、事実を客観的に可視化することに全力を注ぎました。
具体的には、以下のような分析を行いました。
- 業務フローの可視化: 担当者全員に徹底的なヒアリングを行い、問い合わせから受注(または失注)までの全プロセスを図式化しました。
- データ分析: 過去の受注・失注案件のデータを洗い出し、顧客属性、失注理由、受注までの期間などを分析しました。
- 目標の不在の確認: 分析を進める中で、そもそもチームとして目指すべき明確なKGI・KPIが設定されておらず、何をもって「成功」とするかが曖昧であることが判明しました。
- ボトルネックの特定: これらの分析を通じて、「理想とする姿」と「現状」の間に存在するギャップ、つまり最も成果を妨げているボトルネックがどこにあるのかを特定しました。
フェーズ2:戦略設計 ― 「理想の姿」を定義し、そこへ至る「地図」を描いた
課題の正体が分かれば、次はチームが目指すべき「理想の姿」をゴールとして設定し、そこへ至るための共通の「地図」を作ります。闇雲に頑張るのではなく、全員が同じ地図を手にすることで、チームの力は最大化されます。
- 「理想の姿」の定義(目標設定): フェーズ1で見えた課題を基に、「あるべき姿」としてKGI(最重要目標指標:受注率)と、それを達成するためのKPI(重要業績評価指標)を明確に設定しました。これにより、チーム全員が「どこへ向かうのか」というゴールを共有できました。
- 地図となるツールの刷新: 次に、全員が同じ情報を書き込み、同じ基準で判断できるよう、「顧客管理シート」を全面的に刷新しました。失注理由や対応期日など、改善に必要なデータを網羅し、入力の手間を省くためにプルダウン選択式を多用しました。
- 入り口の改善: さらに、最初の顧客接点である問い合わせフォームの項目を見直し、顧客の予算や目的を初期段階で把握できるように改善しました。
フェーズ3:実行の仕組み化 ― 地図を「カーナビ」へと進化させた
優れた地図も、それを見て行動しなければ意味がありません。私たちは、チームが迷わず、効率的に目的地へ向かえるように、実行を強力にサポートする「仕組み(カーナビ)」を構築しました。
このフェーズの目的は、フェーズ1で特定したボトルネックを、人の努力や根性に頼らず、徹底的に解消することでした。
- ボトルネックの徹底的な解消: 対応遅延による失注、後追いの徹底不足などが起きないような仕組み作りと対応の見える化を実装。
- 記録の徹底と効率化: 外出先でもスマートフォンから顧客情報を更新できる「簡易アプリ」を制作し、記録の手間と報告の漏れを大幅に削減しました。
- 優先順位の自動化: 案件のステージ(例:「初回連絡待ち」「提案中」「先方待ち」など)を明確にすることで、今すぐ対応すべき案件が誰の目にも明らかになるようにしました。
- 抜け漏れ防止の仕組み: 最も失注に繋がりやすかった「初期対応の遅れ」や「期日超過」を自動で検知し、担当者やマネージャーに「アラート通知」が飛ぶシステムを構築しました。
- 成果の見える化: KGI・KPIの進捗状況を、いつでも誰でも確認できるダッシュボードを作成。チームの現在地が常に共有されるようにしました。
この記事でお伝えできること、できないこと
この記事では、変革の全体像と戦略的な流れをお伝えしました。しかし、各施策(例えば「顧客管理シートの具体的な作り方」や「簡易アプリの開発手法」など)の詳細なノウハウまで書くと、非常に長くなってしまいます。
それらの具体的な手法については、今後別の記事として公開していきますので、ぜひそちらもご覧ください。
まとめ:最強の営業チームとは、「仕組み」で戦うチームである
特別な才能を持つ個人がいなくても、ごく普通のチームが「優れた仕組み」を持つことで、非凡な成果を出せる。この事例が証明したのは、その事実です。
仕組みによって生まれた時間と心の余裕は、チームに「もっと顧客のために何ができるか」を考える創造性をもたらし、一人ひとりが自信を持って顧客と向き合えるようになりました。売上が上がっただけでなく、チームの雰囲気そのものが変わったのです。
あなたの会社も「個人の頑張り」から脱却し、
持続的に成長する「仕組み」を築きませんか?
その第一歩を、ぜひ私にお手伝いさせてください。
